✨第2話 初めての物件、心臓バクバク

リタイアまでの私

相続の問題が落ち着き、「さあ、ここからだ」と意気込んではみたものの、
実際に何をすればいいのか全然わからなかった。

知り合いに相談しても返ってくるのは、
「本当にやるの?」
そんな半信半疑な反応ばかり。
正直、まともに相手にしてくれる人はいなかった。

ならば自分で調べるしかない。
本屋で関連書籍を買い込み、
役所へ行って必要な手続きの確認をし、
空いた時間に書類を書いて提出した。

けれど、役所からの連絡はいつも同じだった。
「アパートを持っていないので、まだ受付できません。」

前に進んでいるはずなのに、何一つ進んでいない。
そんなもどかしい日々が続いた。


そんなある日、出会ってしまったのだ。
中古のワンルームアパート。

金額は一億円を超えていた。
でも、不思議とまったく実感がなかった。

“人生最大の買い物”というよりも、
「家賃から諸費用を引いたら、毎月いくら残るんだろう?」
そんな計算ばかりしていた。

物件を選んだ理由はとてもシンプルだった。
自分の活動エリアから近いこと。
それだけ。

いままで条件に合う物件がまったく見つからず、
どれも遠すぎて、会社勤めとの両立は無理だと思っていた。

だからこそ、ネットで偶然このアパートを見つけたとき、
胸が少しだけ高鳴った。

立地も悪くない。規模もちょうどいい。
すぐに知り合いの不動産業者へ連絡した。

「この物件、どう思います?」
「悪くないよ。エリアも良いし、売るときも困らない。でも……本当に買うの?」


そこから、僕の“ひとり内覧”が始まった。

平日の昼休みや仕事帰りに現地へ行き、
アパートの周りをぐるっと歩いてみたり、
近くのコンビニに車を停めてぼーっと眺めてみたり。

建物の外壁、駐車場の広さ、入居者の雰囲気、周辺環境。
ただ見ているだけなのに、なぜか胸がざわついた。

頭では数字を追いかけているのに、
心はどこかワクワクしている。

でも、あとになって思えば、
その“ワクワク”こそが
新しい一歩を踏み出すサインだった。


そしてついに、契約の日。

見慣れた契約書を前に、
手が少しだけ震えた。
これまで何百件も見てきた書類なのに、
自分がサインするとなると重みがまるで違った。

契約を終えて外に出た瞬間、
急に冷静になったのを覚えている。

「買ってしまった。」
「本当に一歩、進んでしまったんだ。」

心臓はバクバクだった。
でも、不思議と後悔はなかった。

ただ、一歩前に進んだ——
それだけだった。


次回は、初めての入金を確認した日の話です。
“仕組みでお金が動く”という、不思議でうれしい体験の回です。

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