✨第4話 二棟目購入 ― 情報と勢いのはざまで

リタイアまでの私

一棟目を買ってから、どこか自分が変わった気がした。

「僕は個人事業主なんだ。アパートオーナーなんだ。
自分の名前でお金を稼いでいるんだ。」

そんな思いが、ちょっと誇らしくて。
少しだけ調子にも乗っていたと思う。


その頃から、不思議と電話がよく鳴り始めた。

今まで話したことのない不動産業者からも、
次々と連絡が入ってきた。

「おすすめ物件がありますよ」
「新しいアパートが出ました」
「あなたなら買えると思います」

そんな営業の声が、ほぼ毎日のように飛び込んできた。

そのとき初めて気づいた。

「お金のある人のところには、自然と人が集まるんだな」 と。

もっとも、本当のお金持ちは僕なんかじゃないのだけれど。


そんなある日、ひときわ目を引く物件と出会った。

RC(鉄筋コンクリート)のアパート。
価格は二億円オーバー。

数字を見た瞬間、「さすがに別世界だな」と思った。

けれど不思議なことに、利回りと支出を計算すると、
“手元に残るお金”が思った以上に大きかった。

一棟目よりも安定し、しかも収益が期待できる。

気づけば、頭の中で何度もシミュレーションしていた。

「もし融資が通ったら……」
「もしこれを持てたら……」

その“もし”が現実になるまで、時間はかからなかった。


銀行にも相談した。
担当者は少し驚いた表情をしながらも、

「一棟目の実績があるなら、前向きに検討できます」

そう言ってくれた。

その一言で、背中をぐっと押された。

今思えば、無謀だったと思う。
怖いもの知らずという言葉がぴったりだ。

勢いと、数字のマジック。
それに完全に飲み込まれていた。

「このチャンスを逃す手はない」
本気でそう信じていた。


そして契約の日。

二億円というお金を前にしても、
不思議と怖さよりワクワクのほうが勝っていた。

“ついにここまで来たか”という興奮が、
静かに、でも確かに身体の奥で高鳴っていた。

契約を終えて外に出た瞬間、ふっと我に返る。

「本当に大丈夫か……?」

でも、すぐに「まあ、なんとかなるだろう」と笑っていた。

あの頃の自分を思い返すと、ちょっと恥ずかしい。
けれど、その“勢い”がなければ今の自分はいない。

冷静と情熱のあいだで揺れながら——
僕の賃貸オーナーとしての人生は、またひとつ次の段階へ進んだ。


次回は、管理会社との出会いの話です。
ここから“人との縁”が大きく流れを変えていきます。

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