二棟目のアパートを手に入れ、ようやく落ち着いてきた頃のこと。
オーナーとしてのリズムにも少し慣れ、毎月の入金にも実感がわいてきた。
そんなとき、ふと現実的な壁にぶつかった。
——確定申告。
不動産経営を始めたとはいえ、税金のことはほとんど分からない。
数字は嫌いじゃないけれど得意でもなく、
「経費」「控除」なんて言葉を聞くと、どこか身構えてしまう自分がいた。
「税金を甘くみると、後で痛い目を見るな……」
そんな不安が、頭の片隅でずっとざわついていた。
相続のときにお願いした税理士もいた。
ただ、正直に言えば、どうにも相性が合わなかった。
当時勤めていた司法書士事務所の顧問だった先生で、
上品で、少しセレブな雰囲気のある人。
話すたびに「僕、庶民だからなあ……」と妙な居心地の悪さを感じてしまった。
こっちは「チェーン店のラーメンが一番うまい!」というタイプ。
どうにも世界が違う気がした。
そんなある日、メイン銀行の支店長との世間話の中で、税金の話になった。
「真面目な税理士を知っているから、紹介しようか?」
そう言ってくれて、すぐに食事会を開いてくれた。
会場は焼き肉。お互い気を使わずに話せる、最高の場だ。
第一印象は、とにかく“真面目”。
でも堅苦しくなく、偉そうにもせず、ざっくばらんに色々話してくれた。
後日、改めて顧問契約の説明を受けた。
丸投げではなく、
「一緒に数字を作っていくスタイルですよ」
という方針だった。
帳簿も経費計上も“適当”ではダメ。
こちらもちゃんと考え、向き合う必要がある。
職業柄、個人事業主の現場にはよく行っていたので、
税務署が来て大変なことになったという話は何度も聞いた。
でも、その裏には
——何でも経費にしてしまう
——ずさんな管理
——ルールを理解していない
そんな落とし穴があることも知っていた。
だから僕は、最初からこう決めていた。
クリーンな経営をしよう。
見られて困ることのない数字を出そう。
税金は正攻法で付き合おう。
法律は、うまく付き合えば裏切らない。……たぶん。
そんな僕の考えと、彼のスタイルがぴったり合った。
「この人にお願いしよう」
そう思った。
こうして顧問契約を結び、以来ずっとお世話になっている。
無理を言ったり、泣き言を言ったり、
いまだに迷惑をかけている気もするけれど、
それでも困ったときは丁寧に向き合ってくれる。
やっぱり、不動産もビジネスも“人が人をつなぐ世界”なのだと思う。
次回は、物件をさらに増やしていった頃の話です。



コメント