トラブル発生と資金ショートと売却と

アパートの話

― 大家人生最大の危機 ―

みなさん、こんにちは。

不動産賃貸業の小林です。

前回は、勢いに任せて三棟目、四棟目のアパートを購入したお話をしました。

気づけば四棟、合計64部屋。

少し前まで普通のサラリーマンだった僕が、いつの間にか、なかなかの規模の大家さんになっていました。

毎月の家賃収入も増え、自分の名前で大きなお金を動かしている。

そんな実感が、どこか楽しかったのだと思います。

でも、その裏側で、とんでもないことが起きようとしていました。

資金ショートです。

今回は、僕の大家人生の中でも、特に苦しかった頃のお話です。

正直、あまり思い出したくない出来事でもあります。

でも、これから大家さんを目指す方には、ぜひ知っておいてほしい。

そんな気持ちで書いてみようと思います。

■ 見えていなかった「諸費用」という落とし穴

そもそも、何がいけなかったのでしょうか。

今なら、はっきり分かります。

僕の資金計画が甘かったのです。

三棟目を購入したとき、銀行からの融資は売買代金に対するものでした。

当然、物件を購入するには、それ以外にもお金がかかります。

登記費用、仲介手数料、各種税金など。

いわゆる諸費用です。

ところが、当時の僕は、この諸費用を十分に考えていませんでした。

物件の収支計算はしていたのです。

家賃収入がいくらで、銀行への返済がいくら。

毎月いくら残るのか。

そんな計算ばかりしていました。

でも、購入した時点で、手元のお金がいくら残るのか。

この大切な部分が抜けていたのです。

三棟目の購入では、自己資金をかなり投入しました。

そして、四棟目でも同じことを繰り返しました。

「まあ、家賃収入が入ってくるから大丈夫だろう」

そんな楽観的な考えがあったのだと思います。

気づけば、銀行口座の残高がどんどん減っていました。

物件は増えている。

家賃収入も増えている。

なのに、手元のお金は減っている。

今考えると、恐ろしい話です。

■ トラブルは、なぜか重なってやってくる

そんな状況の中、追い打ちをかけるようにトラブルが発生しました。

しかも、一つではありません。

まず、貯水槽の破裂。

アパートの貯水槽が壊れてしまったのです。

当然、修理が必要です。

入居者さんの生活に関わることですから、放っておくわけにはいきません。

さらに、退去が相次ぎました。

部屋が空けば、次の入居者を募集しなければなりません。

でも、その前にはリフォームが必要です。

当然、お金がかかります。

そして、そこへ税金の支払いがやってきました。

不動産取得税。

さらに、所得税の予定納税。

まるで、こちらの財布の中身を知っているかのようなタイミングです。

もちろん、税金の支払いは突然決まるものではありません。

本来なら、事前に準備しておくべきお金です。

でも、当時の僕には、その準備ができていませんでした。

次から次へと支払いが発生する。

銀行口座の残高を見るたびに、ため息が出る。

そして、とうとう気づきました。

「……お金が足りない。」

■ 家賃収入があるのに、お金がない

この頃、僕は大きな勘違いをしていました。

アパートを所有していれば、毎月家賃が入ってきます。

だから、何とかなると思っていたのです。

でも、現実は違いました。

空室が増えれば、家賃収入は減ります。

空室を埋めるには、リフォームが必要です。

ところが、そのリフォームをするお金がない。

つまり、

お金がないからリフォームできない。

リフォームできないから入居者が決まらない。

入居者が決まらないから、お金が入ってこない。

完全な悪循環でした。

今なら、金融機関への相談など、資金繰りを改善するための方法を考えると思います。

でも、当時の僕には、そんな知識も余裕もありませんでした。

目の前の支払いをどうするか。

そればかり考えていました。

■ 夜も眠れなかった日々

当時、僕はまだサラリーマンとして働いていました。

昼間は司法書士事務所の仕事があります。

仕事が終われば、アパートの問題を考えなければなりません。

貯水槽の修理費用。

退去した部屋のリフォーム代。

銀行への返済。

そして、税金の支払い。

考えても考えても、答えが出ません。

夜、布団に入っても眠れない。

朝になれば、また仕事が始まる。

そんな日々が続きました。

本来の僕は、どちらかというと小心者です。

何事も慎重に考えるタイプだったはずです。

それなのに、物件を次々に購入していた頃は、そんな自分をすっかり忘れていました。

勢いに任せて走り続けた結果、気づけば身動きが取れなくなっていたのです。

「どうして、こんなことになってしまったんだろう……」

何度もそう思いました。

正直、泣きたくなる日もありました。

■ 頭をよぎった、最悪の選択肢

資金繰りが厳しくなると、人間は悪いことばかり考えるようになります。

このままでは、税金も払えない。

修繕費も払えない。

銀行への返済も、いつまで続けられるか分からない。

そんな不安が、どんどん大きくなっていきました。

そして、とうとう頭をよぎったのが、

「いっそ、全部手放してしまおうか……」

という考えでした。

自己破産。

債務整理。

そんな言葉まで頭に浮かびました。

司法書士事務所で働いていた僕は、そうした手続きが決して他人事ではないことも知っていました。

だからこそ、余計に怖かったのだと思います。

もちろん、まだ何も決まったわけではありません。

でも、当時の僕には、事業も生活も失ってしまうような恐怖がありました。

書きながら思い出しても、胸が苦しくなります。

あの頃は、本当に追い詰められていました。

■ そして、ひとつの決断をした

そんな中で、ようやく一つの考えにたどり着きました。

「三棟目を売却すれば、何とかなるんじゃないか?」

三棟目は、鉄骨造のワンルームアパートです。

立地も悪くなく、購入時には収益性も期待していました。

でも、今の僕に必要なのは、物件を増やすことではありません。

手元にお金を残し、事業を立て直すこと。

そのためには、物件を手放すという選択も必要なのではないか。

そう考えるようになりました。

もちろん、簡単な決断ではありませんでした。

せっかく購入したアパートです。

売却すれば、毎月の家賃収入も減ります。

それでも、このままではいけない。

悩んだ末に、三棟目の売却を決断しました。

■ 500万円高く売れた!

ここからは、不動産業者の営業マンが本当に頑張ってくれました。

買主を探し、条件を調整し、売却に向けて動いてくれたのです。

そして、ありがたいことに、予想以上の結果となりました。

なんと、購入したときより500万円高い価格で売却できたのです。

これは本当に助かりました。

ただし、500万円がそのまま利益になるわけではありません。

売却には諸費用もかかりますし、借入金の返済もあります。

それでも、売却によって資金繰りを改善することができました。

あれほど苦しかった毎日から、ようやく抜け出すことができたのです。

本当に、ほっとしました。

ところが……。

世の中、そう簡単には終わりません。

翌年には、売却に伴う税金の負担が待っていました。

「ああ、税金って本当に忘れた頃にやってくるんだな……」

そんなことを思いました。

もちろん、これも本来は計算しておくべきことです。

最後まで、勉強させられました。

■ 大家さんになって、初めて知った本当の怖さ

今振り返ると、あの頃の僕は本当に未熟でした。

物件を購入することに夢中になり、資金繰りの大切さを十分に理解していませんでした。

家賃収入が増えれば、経営は安定する。

そんな単純な話ではなかったのです。

不動産経営には、必ず支出が伴います。

そして、その支出は、こちらの都合に合わせて待ってくれるわけではありません。

建物が壊れれば修理が必要です。

入居者が退去すれば、次の募集に向けた費用が必要です。

税金の支払いもあります。

だからこそ、手元に資金を残しておくことが大切なのです。

当たり前のことですよね。

でも、当時の僕には、その当たり前ができていませんでした。

今回の経験で、僕はひとつのことを学びました。

「利益が出ること」と「お金が足りること」は、まったく別の話。

これは、今でも忘れないようにしています。

■ あの失敗があったから、今がある

あの頃のことを思い出すと、今でも少し恥ずかしくなります。

勢いに任せて物件を増やし、資金繰りに苦しみ、最後には売却することになった。

決して、自慢できる経験ではありません。

でも、あの苦しさを経験したからこそ、今の僕があるのも事実です。

今では、物件を購入するとき、購入後にどれだけ資金が残るのかを以前より慎重に考えるようになりました。

そして、予想外の支出が発生することも、最初から想定するようにしています。

もちろん、今でも完璧ではありません。

まだまだ勉強することばかりです。

ただ、あの頃のように、勢いだけで走り続けることはなくなりました。

……たぶん(笑)。

最後に、これからアパート経営を始めようと考えている方へ。

不動産賃貸業は、決して簡単な仕事ではありません。

家賃収入があるから安心。

物件が増えれば成功。

そんなふうに考えていると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。

どうか、僕と同じ失敗をしないでください。

そして、何よりも大切なのは、

「何かあったときに、持ちこたえられるだけのお金を残しておくこと」

だと思います。

あのときの僕は、幸運にも物件を売却することで立て直すことができました。

でも、いつもそんなにうまくいくとは限りません。

本当に、何事も一寸先は闇ですね。

■ ようやく踏んだブレーキ

三棟目を売却し、何とか資金繰りを立て直すことができました。

でも、だからといって、すぐに次の物件を探そうとは思いませんでした。

それまでの僕は、一棟目、二棟目、三棟目、四棟目と、勢いに任せて走り続けていました。

まさに、アクセル全開です。

ところが、今回の資金ショートで、その勢いは完全に止まりました。

しばらくの間、物件の購入活動はお休みすることにしました。

理由は簡単です。

さすがに、びびりましたからね(笑)。

夜も眠れないほど資金繰りに悩んだ経験は、そう簡単に忘れられるものではありません。

物件を増やすことよりも、今あるアパートをきちんと経営していくこと。

まずは、そこからやり直そうと思いました。

そして、もうひとつ。

物件が増えることと、幸せになることは、必ずしも同じではない。

そんなことも、少しずつ考えるようになりました。

第7話では「止まらないアクセル」と書きましたが、今回の経験で、ようやくブレーキの大切さを知りました。

もっとも、ブレーキを踏むのが、ずいぶん遅かった気もしますが……(笑)。

でも、この経験があったからこそ、今の僕があります。

不動産経営は、決して簡単ではありません。

だからこそ、焦らず、自分のペースで続けていくことが大切なのだと思います。

まだまだ、僕の大家人生は続きます。

それでは、また次回!🏠

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