無事に契約を終え、銀行に報告すると、
担当者は少し驚きながらも「良い物件ですね」と言って融資を進めてくれた。
準備も順調に進み、不動産決済も完了。
ついに——
アパートオーナー「小林」の誕生だ。
「本当に始まったんだな」
そんな高揚感と同時に、
“で、何をすればいいんだろう”という不安が混ざっていた。
管理会社への挨拶、所有者変更、管理委託の契約……
ひとつひとつは大した作業ではないのに、全部が初めてで、胸がそわそわした。
そんな中、管理会社の担当者が言った一言が忘れられない。
「毎月決まった日に、家賃をお振り込みしますね。」
その瞬間、ふっと胸の奥がワクワクした。
いよいよ、自分が“お金をもらう側”になるのか。
オーナーといっても、最初は何もわからない。
仕事の合間に物件を見に行き、
敷地をぐるっと歩いてみたり、
空いている部屋を少し覗いてみたり。
別にやることがあるわけでもないのに、
それが妙に楽しかった。
「自分の場所なんだな」と、じわじわ実感が湧いてきた。
そして迎えた入金日。
「信用していないわけじゃないけど…」
そんな言い訳をしながら銀行へ向かった。
通帳を機械に入れると、
カシャカシャと記帳の音がする。
その短い時間がやけに長く感じた。
印字された数字を見た瞬間、
心の中で「おおっ」と小さく声が出た。

管理会社から入金、ローンの返済、そして残った僕のお金。
いつも見ているはずの数字なのに、
その“意味”がまったく違って見えた。
働いて得るお金ではなく、
“仕組みが生み出した収入”。
その現実が、静かに胸に広がった。
家に帰ってから、もう一度通帳を開いてみた。
数字は同じなのに、なんだか何度見ても飽きなかった。
「これは偶然じゃない。
自分の判断で動いた結果なんだ。」
小さな達成感と、
“もっと勉強しよう”という静かな決意が心に芽生えた。
こうして、僕のオーナーとしての時間が、
ようやく本当の意味で動き始めた。
次回は、二棟目の購入の話です。
ここから一気に世界が広がっていきます。



コメント