相続の問題が落ち着き、「さあ、ここからだ」と意気込んではみたものの、
実際に何をすればいいのか全然わからなかった。
知り合いに相談しても返ってくるのは、
「本当にやるの?」
そんな半信半疑な反応ばかり。
正直、まともに相手にしてくれる人はいなかった。
ならば自分で調べるしかない。
本屋で関連書籍を買い込み、
役所へ行って必要な手続きの確認をし、
空いた時間に書類を書いて提出した。
けれど、役所からの連絡はいつも同じだった。
「アパートを持っていないので、まだ受付できません。」
前に進んでいるはずなのに、何一つ進んでいない。
そんなもどかしい日々が続いた。
そんなある日、出会ってしまったのだ。
中古のワンルームアパート。
金額は一億円を超えていた。
でも、不思議とまったく実感がなかった。
“人生最大の買い物”というよりも、
「家賃から諸費用を引いたら、毎月いくら残るんだろう?」
そんな計算ばかりしていた。

物件を選んだ理由はとてもシンプルだった。
自分の活動エリアから近いこと。
それだけ。
いままで条件に合う物件がまったく見つからず、
どれも遠すぎて、会社勤めとの両立は無理だと思っていた。
だからこそ、ネットで偶然このアパートを見つけたとき、
胸が少しだけ高鳴った。
立地も悪くない。規模もちょうどいい。
すぐに知り合いの不動産業者へ連絡した。
「この物件、どう思います?」
「悪くないよ。エリアも良いし、売るときも困らない。でも……本当に買うの?」
そこから、僕の“ひとり内覧”が始まった。
平日の昼休みや仕事帰りに現地へ行き、
アパートの周りをぐるっと歩いてみたり、
近くのコンビニに車を停めてぼーっと眺めてみたり。
建物の外壁、駐車場の広さ、入居者の雰囲気、周辺環境。
ただ見ているだけなのに、なぜか胸がざわついた。
頭では数字を追いかけているのに、
心はどこかワクワクしている。
でも、あとになって思えば、
その“ワクワク”こそが
新しい一歩を踏み出すサインだった。
そしてついに、契約の日。
見慣れた契約書を前に、
手が少しだけ震えた。
これまで何百件も見てきた書類なのに、
自分がサインするとなると重みがまるで違った。
契約を終えて外に出た瞬間、
急に冷静になったのを覚えている。
「買ってしまった。」
「本当に一歩、進んでしまったんだ。」
心臓はバクバクだった。
でも、不思議と後悔はなかった。
ただ、一歩前に進んだ——
それだけだった。
次回は、初めての入金を確認した日の話です。
“仕組みでお金が動く”という、不思議でうれしい体験の回です。



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