✨第1話 不動産との出会い

リタイアまでの私

司法書士事務所で働いていた頃、
司法書士の資格を持たない僕の仕事は、主に営業事務でした。
登記手続きの準備や打ち合わせをしながら、
毎日のように不動産と向き合っていました。

不動産業者さんや銀行員さんと話す機会も多く、
気づけば“土地”や“建物”の話ばかりしている自分がいました。
でも、それはあくまで「他人の物件」の話。
自分で買うとか、経営するとか——
そんなことは、まったく別世界のことだと思っていました。


転機は、突然やってきました。
元気だった祖父が急に他界し、僕は相続人として“当事者”になったのです。

相続したのは、農地を含む土地と古い建物。
他の相続人はお金の面で全く協力してくれず、
相続税の支払いはすべて僕一人の肩にのしかかりました。

高額な税金を前に、どうしていいのか分からず頭を抱えていたとき、
親しくしていた銀行の支店長がこう言いました。

「せっかく不動産を相続したなら、それを活かしてみたらどう?」

最初は何のことかわかりませんでした。
すると支店長は、ゆっくり続けました。

「相続した不動産を担保に融資するから、まず相続税を納めて、
残った資金でアパートを買って経営してみたら?
アパートの購入資金も融資するし、
個人事業主になれば、きっとサラリーマンのままではいられなくなるよ。」

この一言が、僕の人生を大きく変えました。


「自分がアパートを持つ?個人事業主…?」
頭の中はハテナだらけ。

半信半疑のまま、仲の良い不動産業者に相談し、
いくつもの物件を“こっそり”見て回りました。

こっそりと言っても、物件の中に入るわけではありません。
建物の周りを車で一周してみたり、
近くのコンビニに車を停めて、車中からぼーっと眺めてみたり。
他人から見れば「道に迷った人」か「休憩中の人」、「サボっているサラリーマン」に見える程度です。

わからないことばかりで不安もありましたが、
この「買う側の景色」を初めて体感した瞬間でした。

当時の僕は、まさかそれが“副業の始まり”になるとは思ってもいませんでした。
けれど、いま思えば——
あの支店長の一言がなければ、今の僕はいなかったと思います。


次回は、初めて物件を買う話です。

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